リスクベースのモニタリング(RBM)に関して、製薬企業やCROは様々な課題に直面しています。例えばオンサイトモニタリングの有効性や、クリティカルおよびノンクリティカルデータのエラー、また高コストであるRBM専用システムの利用などが含まれます。これらの懸念から、RBM専門家である近藤秀宣氏(エイツーヘルスケア株式会社)によって「Kondo method」が開発されました。彼の手法は、あらゆるタイプの臨床試験において被験者の安全性やデータ品質の確保、コスト削減が実現します。
重要なポイント
日本では、高品質な臨床試験や多数の患者を対象とできるため、臨床試験の実施国として定評を得ています。オンサイトモニタリングに費やす時間を削減することは、スポンサー企業のコスト削減につながり、競争の激しいCRO市場で重要な差別化要素となります。
日本のトップCROの1社であるエイツーヘルスケア株式会社は、2003年に設立されました。現在約1,200名の従業員が、日本および台湾における製薬会社やバイオテクノロジー企業の臨床試験をサポートしています。モニタリング業務は同社最大のサービスの一つであり、CRAは従業員の約半数を占めています。近藤氏は2009年にエイツーヘルスケアに入社し、現在は専門チームを率いてRBMを実施しています。
近藤氏とそのチームは、拡張性に優れたViedoc EDCシステムを使用して医療機関のデータを収集し、臨床試験中のリスク管理を行っています。
近藤氏とそのチームは、医療機関のリスク評価とセントラルモニタリングを活用することにより、小規模な試験でもRBMを実施する方法を見出しました。
近藤氏の手法では、Source Data Verification(SDV)およびSource Data Review(SDR)を、全データ・プロセスへの実施と部分的なデータ・プロセスへの実施に切り替えて行うことを提唱しています。試験を通して、Monitor-driven Risk Assessment Categorization Tool(MRACT)を用いて切り替えを制御することで試験結果の信頼性を確保しています。
「私たちは、MRACTによる医療機関のリスク評価結果とセントラルモニタリングに基づき、サイトモニタリングを100% SDV/SDRから部分的なSDV/SDRに切り替える戦略を採用しました。」と近藤氏は説明します。「MRACTを使用してモニタリングアプローチを定義し、それをViedoc上で実装および制御します。非常にシンプルな方法です。」
「成功のポイントの一つは、試験結果の信頼性と効率的なモニタリングを確保することです。部分的なSDV/SDRへ切り替えを行った医療機関では、クリティカルデータの修正がありませんでした。また、データ修正が少なく、オンサイトモニタリングの時間が30%削減されました。」
Kondo method使用することで、あらゆるタイプの試験にRBM対応が可能になります。「小規模試験やシンプルなデザインの試験、また複雑な試験など、あらゆるタイプの試験に適用できます。分散型試験 においては、SDVだけでなくSDRにも注力しており、医療機関でのプロセスやデータ収集を確認する必要があります。Kondo methodを活用することで、業務負担が軽減されるため、オンサイトモニタリングの削減に効果的であると考えています。これにより、エイツーヘルスケアはCROとしてより競争力を高めることが出来ています。」と近藤氏は補足します。
効率性は近藤氏にとって、製薬業界でのキャリアをスタートする前からの重要なテーマでした。慶應義塾大学在学中から、より効率的な医薬品開発のためのフレームワークを作りたいという意欲を抱いていました。
近藤氏は大学卒業後エイツーヘルスケア株式会社に入社しました。「エイツーヘルスケアでは、医薬品開発の多くの経験を積むことができると感じました。様々な製薬会社の医薬品を開発する方法を見る機会があり、あらゆる工程を効率化させたいという思いが強くなりました。また、エイツーヘルスケアは積極的に新しいテクノロジーを導入する会社です。Viedocはエイツーヘルスケアの特別なパートナーであり、Viedoc EDCを使用して Kondo methodを実施しています。Viedoc EDCを使用した成功事例が豊富にあり、Viedocと共にKondo methodを更に取り入れるために様々な可能性を探求できると信じています。」
近藤氏は2021年に東北大学医学部大学院で博士号を取得し、グローバルな非営利団体であるDIAから、その年にDIAコミュニティーの中で最もダウンロードされた論文としてInspire Awardを受賞しています。